No.32979の記事

アップル社、デジタル教科書分野進出〜The Wall Street Journal紙分析

アップロードファイル 739KBアップロードファイル 16KB

Apple Jumps Into Textbooks: With More iPads in Classrooms, Education Push Would Help Fend Off Android-Device Competion

1月20日(金曜日)付けのThe Wall Street Journal紙市場欄(Marketplace)は、アップル社の教科書分野への「進出」を経済紙として他紙よりも詳細に報じています。

以下は記事内容の要点リストです。

1)アップル社は、学校の教室でiPadをより多く使ってもらう事で、Google社の基本ソフトを採用した他社のデジタル機器(タブレットを含む)の浸透に対抗出来る〜と思っているのだろう。
2)アップル社は、(今回の発表で)デジタル教科書(digital textbooks)の「販売」ビジネス競争に参加した。
3)iBooks 2プログラムを発表。iBooksとは、乱暴に言ってしまえば、Apple社のオンライン(デジタル書籍販売)書店の事。ここで、ミニ・テスト(quizzes)を施行する事、講義ノートを取る事(note-taking)、勉強カード(study cards)を作る事が同時に出来てしまう(新しい)デジタル教科書類が販売される。
4)このアップル社のデジタル教科書販売プログラムに、まずはMcGraw-Hill出版社とPearson出版社が高校生向けのデジタル教科書数冊(a small number of high-school titles)を出品、近い将来にHJoughton Mifflin Harcourt出版社が矢張り数冊のデジタル教科書でフォローするというもの。まずは、代数初級(algebrea 1), 環境科学(environmental science), 生物学(biology)の教科書がiBooks書棚に並ぶ予定で、とりあえずの販売価格は$14.99 ($1,200円)かそれ以下に設定される(が、将来もこの価格が維持されるかどうかは未定)
5)アップル社は、やがては、すべての科目で、すべての学年向けのデジタル教科書を扱いたいと発表。
6)アップル社は、iBooks Authorと称される(双方向性機能を持った)デジタル書籍作りの応用ソフトの無料提供を発表。
7)アップル社側の重役達は、『現在出回っている教科書は、テクノロジーが進歩した今日では、適切な教育ツール(teaching tools)としては時代遅れになっている。今後の教科書は、(1)持ち運びが出来る(portable)、(2)検索が出来る(searchable)、(3)改定が簡単(easy to update)であるべきだ』とコメントを出した。発表会の場で、重役達は、デジタル教科書の図(diagrams)やビデオを取り込んだり(load)、指先で縮小(pinching your fingers)、操作(manipulate)、消去する(close)などの操作を簡単に行うデモンストレーションを披露した。Productivity Applications分野担当副社長のRoger Rosner氏は、『(新しいデジタル教科書の)尤も基本的なコンセプトは、(教科書が)すぐに(生徒に)フィードバックが出せる(immediate feeback)機能だ』と、コメントを出しています。
8)デジタル教科書が将来隆盛を迎える理由の背景には、紙媒体の教科書(と教育費)のコスト上昇がある。デジタル教科書はコスト抑制に寄与するものだという理解がある。
9)2011年で、教科書の3%がデジタル教科書だった。2012年には、6%に上昇が見込まれ、2020年には50%にまで伸びるだろうと推定されている。(MBS Direct Digital 社調査資料)
10)アップル社は、永年教育機関(学校のクラスルーム使用)を顧客にしたいと願ってきた背景が今回の発表の裏にある。2011年7月〜9月の四半期会計報告に依ると、アップル社は1,100万台のiPadを販売、現時点で教育機関は150万台のiPadを購入している(だけだ)。もっとiPadを教育機関に浸透させる事(a bigger footprint in education)で、商売ライバルであるGoogle社のアンドロイドOS基本ソフトを採用している他社の(安い)タブレット機の学校進出を妨げたいと願っている。
11)デジタル教科書の販売拡張には、テクノロジーの進歩だけでなく、従来の紙の教科書販売ビジネス・モデルがどれだけ早急に変化出来るかにも掛かっている。紙の教科書は、地域の教育委員会が「数年間の使用期間(5−6年)」という条件で、一冊当たり平均$75(6,000円)で出版社から買い取るビジネス・モデルを踏襲している。アップル社の今回のビジネス・モデルは、一年一人使用で、一冊$15 (1,200円)というものだ。大きな変革と言えるが、大手教科書出版元であるMcGraw-Hill社のHarold "Terry" McGraw III会長兼最高経営執行者は、『$15の価格で我が社は大変うまく行くと確信している』と、コメントを出しています。因に、McGraw-Hill社は、現時点で5冊の(草稿構成を持った)デジタル教科書をアップル社のiBooks書店に出す事を決定、2012年の9月までに5冊追加する予定です。
12)デジタル教科書は、iPadでしか読む事が出来ません。しかし、他の一般デジタル書籍は、iPad以外のiPhoneやiPod Touchでも読む事が出来ます。
13)アップルのデジタル書籍の販売数は、現時点では業界第三位に甘んじています。Amazon.com社の電子書店部門とBarnes & Noble 書店チェーンのデジタル書籍分野がトップ争いをしています。
14)科学系テレビ番組制作や配給で知られるDiscovery Communications社は、Webサイト経由で小学校向けのデジタル科学教科書(1冊)を制作・販売しています。更に、Web経由でiPadでも見る事が出来るビジネス・モデルを試しています。教育部門担当(執行)社長のBill Goodwyn氏は、『我が社は一社だけに縛られるビジネスをしたくないし、iPadを購入出来る予算を持てる学校組織がどれだけあるというのだろうか?』と、iPadだけのでのデジタル教科書ビジネスに疑問を投げています。
15)CourseSmart社は、(米国の)大手教科書出版社5社が共同でデジタル教科書作りのために創立した組織(a joint venture)です。既に、2万冊のデジタル教科書を持っており、これらはiPadだけでなく、他のアップル社のデジタル機器(パソコン、携帯iPhone, iPod Touch)に加え、Barnes & Noble書店チェーンのNook Color読書機、Nook Tablet機、Amazon.com社のKindle Fire読書機でも読めるように作られています。Jill Ambrose販売担当最高責任者は、『高校生のほんの一部しかiPadを持っていなのではないでしょうか?』と、iPadオンリーのデジタル教科書販売ビジネス・モデルを冷ややかに捉えています。Ambrose女史は、『iBooks Authorソフトを使って誰でも教科書を作れるようになって、コンテンツのレベルが低下(lead to lower standards)するのではないでしょうか?社会は、きちんと制作された高度なレベルの教科書を必要としているのでは?』とも、iBook Authorの波及効果にも疑問を投げています。
16)コネチカット州にある男子全寮制高校the South Kent Schoolのテクノロジー担当部長(director)のGonzalo Garcia氏は、今回アップル社が発表した内容は、既にInkling社やCourseSmart社が発行しているデジタル教科書と根本的に大差ないとしながらも、『尤もショッキングなニュースは、デジタル教科書の販売価格だ。他社のは6ヶ月使用契約で$20~$60が平均価格、高いデジタル教科書は$100もしたが、アップルiBooksでのデジタル教科書の御値段は$15と破格に安い』と感想を述べています。この高校でも、デジタル教科書に移行するまえに、高価なiPad機を購入するという問題がありましたが、卒業生たちの同窓会が必要な基金を寄付してくれる事で、問題を解決しています。卒業生たちの寄付がなければ、デジタル教科書への以降は難しかっただろう事が指摘されています。
17)アップル社は、以上のiBooks 2とiBooks Authorのほかに、3つ目の発表として、iTunes Uのアップグレードを同時発表しています。元々は、podcasting機能を使って、「大学」の講義の録音やビデオをApple機器に流すプログラムでしたが、今回のアップグレードで、幼稚園から高校まで門戸を解放する事になりました。更に、講義の履修過程表(syllabuses), 宿題リストも加味出来る機能を加え、授業内容を受け身でなく積極的に学べるように変革されています。アップル社の発表では、従来の機能でも1,000の大学組織がiTunes Uを利用、7億人の学生が講義を視聴しています。既に2万のiTunes Uソフトがダウンロードされている事実から、近未来にiTunes Uを利用して幼稚園から大学までの授業内容が一般市民に公開される事は必須と見られています。